保守本流の人類学
1.日本人はるかな旅
先日、NHKの「日本人はるかな旅」と言う番組があった。縄文人と弥生人との関係について大要次のように述べていた。
「縄文人と弥生人。ともにわたしたち日本人の祖先といわれているが、その姿形は大きく異なっている。約2500年前を境にしたこの違いは、進化の結果であろうか、それとも、人が入れ替わるほどの大変動があったからなのであろうか。
近年になって中国山東省で弥生人にそっくりな人骨が見つかったことから、長年続いてきた論争に決着がついた。縄文時代が終わるころ、大陸から縄文人とは姿形の違う人たちが日本列島に渡来してきたのである。
当時の中国は「春秋戦国」と呼ばれる戦乱の時代。戦火を逃れた人たちが、いわば“ボートピープル”になって日本列島に安住の地を求めたと考えられる。その後、渡来系の人たちと先住民である縄文系の人たちがせめぎ合いながら、共存・融合を繰り返し、現代の日本人につながる弥生人が生まれたのである。」
保守本流の歴史学・考古学・人類学を支持してきたとばかり思っていたNHKがこのような見解を示したのは筆者には全く意外であった。
【引用・参考文献】
河合信和『ヒトはどこからきたか―最新考古学の世界』(朝日新聞社 1991年)
埴原和郎編『日本人の起源』(朝日新聞社 1984)
埴原和郎『日本人はどこからきたか―新・日本人起源論の試み』(小学館 1984)
埴原和郎編『日本人の起源―周辺民族との関係をめぐって』(小学館 1986)
埴原和郎『日本人誕生―現代人の起源に迫る』(集英社 1986)
埴原和郎『日本人新起源論』(角川書店 1990)
埴原和郎編『日本人と日本文化の形成』(朝倉書店 1993)
尾本恵一『北と南のモンゴロイド』(『科学』1992年4月号)
加藤晋平『日本人はどこから来たか―東アジアの旧石器文化』(岩波新書 1988)
松本秀雄『血液型は語る―親子鑑定と日本人の起源』(裳書房 1990年)
松本秀雄『日本人は何処から来たか―血液型遺伝子から解く』(NHKBOOKS)
日沼頼夫『新ウイルス物語―日本人の起源を探る』(中公新書)
小山修三『縄文時代―コンピュータ考古学による復元』(中公新書)
岩田一平『縄文人は飲んべえだった―ハイテクで探る古代の日本』(朝日新聞社 1992)
『NEWTON』1990年4月号『大特集 ここまでわかった日本人の起源』(教育社 1990)
佐々木高明・森島啓子編『日本文化の起源―民族学と遺伝学の対話』(講談社1993)
鈴木公雄編『争点 日本の歴史 原始編 旧石器~縄文・弥生時代』(新人物往来社 1990)
鈴木公雄・石川日出志編『新視点 日本の歴史』第1巻原始編(紀行社 1993)
『原日本人―弥生人と縄文人のナゾ』(朝日新聞社 朝日ワンテーママガジンM 1993)
松下孝幸『日本人と弥生人―その謎の関係(ルーツ)を形質人類学が明かす』(祥伝社 1994)
安田喜憲・松岡数充編『文明と環境U日本文化と民族移動』(思文閣出版 1994)
小熊英二『単一民族神話の起源』(新曜社 1995)
田村貞雄『新編・日本史をみなおす地域と文化』(青木書店 1996)
池田次郎『日本人のきた道』(朝日選書)
ブルース・バートン『国境の誕生―大宰府から見た日本の原形』(NHKBOOKS)
斎藤忠『日本人はどこから来たか』(講談社学術文庫)