第1222回 正座は 僧侶だけ

 平成28年 6月30日~

 巡番報恩講に出勤し、外陣の参拝者を見ると、椅子に座ってお聴聞する人が
ほとんどとなりました。

 その椅子も、子供用の様に小さな椅子、パイプ椅子、この頃流行りの木製の椅子と、
各種並べてあるお寺があります。

二十年ほど前までは、本堂は全員が正座でした。
本堂の端に応接セットの椅子が置いてある程度で、「近頃の若い者は座りきらん、
困ったもん」と、年配者の声が聞こえたものです。


時々、本堂の後方にパイプ椅子が、並べてあるお寺が現れてきました。
折りたためば、運びやすくまた保存しやすいこともあり、大量に購入された
お寺もあるようです。

ただ問題は、畳にパイプの跡が残る難点があり、絨毯を敷いて使われていました。

その数少ないパイプ椅子に、「近頃の若者は座りきらん」と嘆いていた方々が、
我先にと座られるようになって、登場してきたのが、幼稚園や保育園で使うような
小型の金属の椅子です。
これは、畳を傷つけることもなく、大いに流行しましたが、長時間座っていると
疲れるものでした。


ついに大人用の椅子の高さで、木製、しかも積み重ねて保存出来る椅子を、盛んに
勧めて回る業者が現れ、小型の椅子に取って替わりました。
また、料亭など食事をする所でも、畳の部屋に椅子を置くようになりはじめると、
飲食店の食器など販売する業者が、机や椅子のカタログ販売に進出して、この数年で
本堂の主流は、木製の椅子となってしまいました。


その結果、気づくとお内陣出勤の僧侶だけが正座で、参拝者は全員椅子という光景が
普通となっています。

椅子席は、正座に比べると場所を多く取ります。
縦横整然と並べられた椅子が満席で安心していますが、正座の時代には、
もっと多くの人々が本堂に満ちていたのではないかと思われます。


 椅子の変遷を物語るように、小さな鉄製椅子、木の椅子、パイプ椅子と 並べられた
お寺を見るにつけ、時代の変化を強く感じるものです



         


           私も一言(伝言板)