第1221回 金箔の輝き

 平成28年 6月23日~

 巡番報恩講を記録する冊子に、こんな原稿を応募しました。

 浄土真宗独特の金色に輝くお内陣を、巡番報恩講をご縁に修復するところも多く、
私どもも、欄間と柱を張り替えました。
細かな細工のものは、仏具店に持ち帰りますので、作業の様子は見れませんでしたが、
金柱の張り替えは、見ることができました。

まだ充分金色に光っているのに、惜しげも無く全部はぎ取り、まず下地の漆を塗り、
乾いたところで、紙やすりで磨き上げ、また漆を塗り、また磨き、漆を塗ること数回繰り返し、
最後に仕上げの黒光りする漆を塗って、その上に金箔を置いていきます。

漆を塗った柱に、金箔を近づけると、柱に吸い付いていくように、飛び付いていくように
金箔が貼られていきます。
しかし金箔には無数の凹凸や皺があり、これは失敗ではないか、大丈夫だろうかと、
とても心配です。

ところが次の日に見ると、漆のなめらかな光沢の上に、ヒーンと張り付き、光りを放っています。
叩いて叩いてミクロの薄さになった金箔が、元に戻ろうとする力がはたらき、
伸びていくためなのでしょう。

金箔のお内陣の輝きに、精彩がない時代がありました。
照明が蛍光灯に変わってきた時代です。
太陽光や電球では金色に光っていたのに、蛍光灯のブルーの灯りでは、本来の金箔の輝きは、
生み出せないようです。
同じ蛍光灯でも、電球色とか昼光色など、少し黄色がかった、太陽の光に近いものだと、
素晴らしい輝きが出てくるものです。

蛍光灯の時代から、LEDに変わってきて、同じように金色が輝かないお寺があります。
事務室や居間で使う普通のLEDではなく、電球色や自然光に近いものを選ぶと、
本来の金箔の輝きを見ることが出来るものですが、残念です。

お内陣は、暗い方が良いと思われるご住職、明るいのが好きなご住職、それぞれに
こだわりがあるようで、他のお寺に出勤する時、それを見届ける楽しみもあります。  

全体は暗くして、ご本尊だけが浮き出てくるように、照明をされているお寺もありますが、
沢山の法中さんが出勤され、余間に座った方から、声明本の文字が見えないとのご指摘を
受けてしまいます。

今回LED電球に交換するとき、電球色でしかも明るさを自由に変化調節出来るものを選び、
取り付けていただきました。
お勤め中は、お内陣全体を明るくし、ご法話が始まる前に、少しずつ明るさを落として、暗いお内陣にし、
またお勤めが始まる前に徐々に明るくし、全体を照して明るいお内陣へと、切り替える試みです。

 気づかれない程度に、徐々に明るくし、また暗くしていき、参拝者には、変化したことを
気づかれないようにしました。
お内陣を暗くすると、ご本尊と、ご講師の姿が浮き出てきて、ご法話へ集中することが出来ますので、
この可変式の照明は、成功したのではないかと自己満足しています。



         


           私も一言(伝言板)