第1193回 自分に自信を持つ

平成27年 12月 10日〜

 ひと昔前の日本社会では、地域の人びとが助けあって暮らすという
互助精神が、庶民の知恵として生きていました。

 しかしながら、工業化や都市化にともなってそうした社会は崩れてしまい、
現在の日本では、自分と同じ組織の中にいる人びと以外とは

こころを通わせない傾向があるように思えてなりません。

自分たち身内だけで通用する考えや言動に満足し、自分が所属する組織外の
人びとが、物質的に、あるいは精神的に困っていても見過ごしてしまう点

も気になるところです。

 一見、華やかに見える社会の陰でますます格差が広がっており、
困などに苦しんでいる人がたくさんいます。
そのような人たちにあたたかい思いを馳せられるかどうかは、自分自身に
自信があるかないかによって大きく違ってきます。


 自分自身に自信のない人は、ともすれば、相手からの攻撃を恐れ、
防御しようとして自分の外側に垣根をつくります。
他人の欠点を突くのに熱心でも、他人を褒めようとはしません。

反面、自分が批判されると素直に受け入れられず、むしろ強く反発しがちです。
そのために、いろいろな機会に恵まれても活かせず、他人に対して思いやりを
持って接することができないのです。

 一方、自分自身に自信のある人は、自分が失敗したら素直に謝ることができます。
他人からの攻撃に対しては、「それも私の一部です」と柔らかく受け止められ、
他人の失敗にも寛容です。さまざまな機会と真摯に向き合い、それを活かして、
困っている人にもあたたかく接していけるでしょう。


 こうした自信は、どこから生まれてくるのでしょうか。親など保護者が
子どもを愛情深く大事に育てると、子どもは安心して成長でき、
それによって自信というものが育つといわれています。

こどもが失敗したり、危険な目に遭ったときに親に抱きしめられたという体験が、
そして、無条件にいのちを受け入れられたという確かさが、生きていくうえでの
大きな支えになるのです。


 大人になってからも同じです。
知りあった相手が愛情を持って接してくれる人か、はじめからつらくあたる人かで、
生きる力が湧いてくるかどうかが違ってきます。

 自分のいのちが受け入れられているのですから、他の人のいのちもできるだけ
受け入れられるように、愛情を持って人と接する人間になりたいものです。


            株式会社PHP研究所発行 「人生は価値ある一瞬」より

         


           私も一言(伝言板)