第1186回  艱難なんじを玉にす

平成27年 10月22日〜

「艱難(かんなん)なんじを玉にす」 という格言があります。
 つらいこと、苦しいことを体験することで、人間は磨かれ、輝いていく
ようになるという意味です。

  最近はそういう考えがなくなりつつあり、つらい体験をすると、自分を
棚上げして、一方的に相手を恨むほうに走ってしまう傾向が見られます。 

私は悪くない悪いのは相手 どこまでも相手を悪者にして、自分をいっこうに

顧みようとしない姿を見ると、現代人は、成長しないまま大人になって
しまったのではないかとさえ思うほど、社会全体が自分にとって不愉快な人を
許さなくなってきている気がします。

 何かつらい目に遭うとやり返して解決しようとしたり、リベンジを煽り立てる
ような風潮は 決して好ましくありません。これが野放しになると、いよいよ
世の中は生きにくく、荒々しいものになっていくのではないかと心配です。

  また、復讐を考える人間も、仕返しに人生を拘束されて一生が終わってしまう
 という非常に不毛な生涯を送る結果になります。

他を攻撃するのは、自分に自信がない、自分のいのちに自信がないからで、
攻撃によって 生きている実感を味わっているのではないかと思います。


  さらにいえば、つらさを受け入れられない自分の弱さを隠すためにあるいは、
弱さを自分で意識しないようにするために 他人を攻撃しているのではない
でしょうか。

もちろん、つらいことは本人の責任だけではありません。
周りの問題もあるでしょうが、それを単に 人のせいにして恨みを抱き、
相手に復讐しようとするのは どうかと思います。


 つらくて苦しい経験を、自分が人間的に成長するための よいきっかけ
として  受け入れていってほしい、と願わずにはいられません。

   株式会社PHP研究所発行 「人生は価値ある一瞬」より



         


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