精神科医と共産主義者

精神科医の御三家
 まじめな精神科医が聞いたら激怒するかもしれないが、筆者の経験によれば精神科医の主流をしめる人たちは、大きく3種類に分けられる。まず第一、よく他科の医師が結構な確信を持って陰口で言うことであるが、自分自身が「変な」人である。その次が、全く精神科の正規のトレーニングを受けていない精神科医。そして三番目が「共産主義者」である。いままで何回もこれを言って共産主義者の精神科医に怒られたことがある。統計をとったわけではないので、あくまで筆者の経験による印象以上のものではないと言っておくことにする。
 第一に挙げた、自分自身変な人というのは、実施に精神科医とつき合えば分ることであるが、その機会に恵まれないなら知り合いの「本音をしゃべる」医師に聞いてみるとよい。
 第二に挙げた正規のトレーニングを受けていない精神科医であるが、これについては日本の精神医療の決して消せない大汚点である「宇都宮病院事件」というものがある。昔、日本においては結核が国民病と呼ばれていたのだが、保健所の活動や抗結核薬の開発によって結核患者が減った。このため経営が成りたたなくなった多くの結核病院が精神病院への鞍替えしたのである。当然のように急増した病院のなかには医療、看護の質の面で劣るものが多く存在していたのである。このような背景のもとでこの事件は起こった。何のことはない、にわか精神科医である。世間では大きな誤解があるようであるが医師免許は一種類であって何も「内科医の免許」やら「外科医の免許」があるわけではない、皆適当に標榜しているに過ぎない。現在では麻酔科など数科のみが国家認定の標榜科であるにすぎない。宇都宮病院事件に懲りた厚生省は、「精神保健指定医」なるものをこしらえたが何せ、既得権と村社会が自慢の日本であるからして、当初指定医になった人たちの学問的資質はおおよそ想像がつく。
 さて真打ちは、最後に挙げた「主義者」である。現在の状況は詳しく知らないが、少なくとも十数年前までは、東大医学部の精神科は「○共」と「新左翼」に分かれて争っていた。信州の山奥の病院に東大卒の精神科医が複数いたがもちろん左翼であった。学生運動が盛んだった頃、精神科の教室は主義者の拠点であった。筑波大学名誉教授で岡山大学医学部卒業の小田晋博士も著書の中で精神科医に主義者が多いことを憤っておられた。

精神科医は哲学者?
 何をもって誰かの頭のことを「おかしい」と言えるのか。もちろん誰の目から見ても「病気」の人はいるのだが「正常」との線引きを客観的に示すのは決して簡単なことではない。筆者が「私は神の子である」とか「私には神が見える」「神の声が聞こえる」とか言えば大概の人は冗談と思うか、おかしいと思うかであろう。これが絶対的な確信でもって言えば全員が「彼はおかしい」と思うに違いない。ところが歴史上の偉人やら聖人やらにこの類の人は多い。もちろん精神科医の大先生達は色々と理屈を付けて「それとこれとは違う」と言ってらっしゃるようではある。心の病の分類、精神病の区分けは難しく、線引きには偏見が紛れ込みやすい。
 第一、他の医学の分野と違って精神科学は最近まで生物学的な基礎を持たなかった。精神科以外の医学分野が解剖学、生理学をはじめとした、人間の構造や働きについて科学的分析の上に診断と治療を行っていたのに対し、精神科学は「心」という形のないものに対して「診断・治療」を行っていた。通常の病理学が組織や臓器の異常を研究するのに対して、精神病理学は哲学的な分析と解釈ばかりであった。はっきり言ってしまえば、精神病理学とは非科学的な学問であった。勢い精神科医は「哲学者ぶった医者」ばかりになってしまったのである。

政敵や反抗分子は「精神病者」
 筆者が学生のとき日○の信奉者に「ソ連は、反体制派や内部告発者を精神病院に監禁し、拷問している」と言ったら「そんなのはアメリカが振りまく嘘だ」と何の証拠もないのにアメリカを非難していた。もちろん共産党による精神医学の悪用は、アメリカのデマなどではなく正真正銘の事実であったことがソ連の崩壊後、学者の研究やアムネスティの発表で世界中に明らかになった。おもしろいのは病院に入れる方が裁判にかけるより費用がかからないというのが、精神科学の悪用の理由の一つらしいことである。精神医学の悪用は別にソ連の専売特許ではないらしく、中国の法律では、“社会にとって政治的に損害を与えるもの”は、法的に危険な精神病的な振る舞いとされているという。反政府的な演説、「反動的」な書簡などが政治的な損害を与える行為らしい。共産主義国においては、社会的な統制の仕組みに精神科学が悪用され、政治的、社会的な反対者を圧迫していたのである。
 そう言えばどこかの国の共産主義者達もよく論敵に対して「被害妄想」だの「誇大妄想」だのといった言葉を浴びせかけ、自分の敵が精神症状の持ち主であると言って攻撃している。

あなおそろしや
 元 共○党国会議員秘書兵本達吉、元 ○青中野地区委員会副委員長安東親範の証言によれば、○本共○党系の医療機関団体「○日本○主医療機○連合会(○医連)」の総本山とも言える東京の代々木病院が、世界の共産主義諸国における強制収容所と化しているという。安東は、「日本○産党には゛強制収容所″があって、党の言うことをきかない人間を代々木病院の精神科に連れて行っている。」と公然と主張している。
 反体制派や意見を異にする者に「精神病患者」のレッテルを貼って、彼らの主張が一般国民から相手にされなくして葬り去ろうということらしい。要するに彼らは精神病や精神病者に対する社会の偏見や差別を前提にして、政敵を社会的に葬り去るわけである。ここに彼らの人権感覚の完璧な欠如が見て取れるのである。



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