味噌も糞も一緒

 
の有名な「おねだり元厚生省事務次官」岡光某が起こした福祉施設をめぐる贈収賄事件では、証拠によって裏付けられた賄賂だけでも総額6000万円、そのほかマンションの購入やら乗用車の提供、岡光夫人の社会福祉法人理事への就任等々が検察によって明らかにされた。あろう事か、岡光は賄賂総額と同じ額の退職金まで受け取ったあげくに、裁判が始まると無実を主張するという「人格者」ぶりを発揮したのである。彼の行動には「エリート意識」のかけらも見あたらないが、それはさておき、この事件に関連して官僚連中の業者との癒着と「おねだり」ぶりが暴露された。その中で官僚が利害関係を有する業者の「勉強会」と称する集まりなどで「講師」を頼まれ、法外な「講演料」をもらっていたことが問題となった。しかし犯罪としては立件されなかった。「講演料」は労働の対価ではないので給料の二重取りなどではなく、額がいくら法外でも、実質的には「賄賂」であっても犯罪にはならないと判断されたからである。
 
こまではまだいいのだが、問題はそのあとである。筆者は報道でこのことを知ったとき嫌な予感がしていたのだが、事実やっぱりそうなったのである。いわゆる「味噌も糞も一緒」の理論の適用が始まったのである。それも、いわゆるノンキャリアの人々の「妬みや、僻み」といった劣情とあいまって押し寄せてきた。公務員には様々な専門的知識や技術を持つ者がいる。それらの知識や技術を公務以外の「公共の利益」に用いる事が、公務に支障のない範囲で、公務に専念するのと同等以上の公共的価値を生ずる場合に「職務専念義務免除(職免)」が適用される。具体的には、学校の非常勤講師や、各種の講演会の講師などが考えられる。この際、講師料として儀礼的な金員が支払われるのが通常である。これは、公務員労働組合の用務に対して適用される「職免」よりずっといいことだと筆者は思う。もちろん、対象が上記のような利害関係のある業者であったり、「講師料」が法外な額であったり、講演活動が過度に頻繁で常態化していて本業に支障を来したりすることは不当であると考える。このような活動が岡光事件以来ほとんど出来なくなったのである。特に国立病院の専門医などの高度の知識や技術、貴重な経験を持つ人たちに講義・講演を依頼することが事実上出来ない。なんと、無料のボランティアなら良いとのことである。しかし、忙しい日常業務の中を、義務もないことで、時には遠路はるばる来てもらうのに少額の謝金も出せないのではあまりに心苦しい。筆者にはこのことが、本音に劣情を抱きながら「味噌と糞を一緒」にして、大きな利益を失う愚行を行っているとしか思えない。
 
て、よくボランティア、ボランティアと言うが、ボランティアとは自発的に行うことであって人に押しつける類のものではないのは当然のことである。また、ボランティアは全く無報酬でなければならないと決まったものでもない。本来の労働の対価よりも安ければその分ボランティアだと筆者は思う。



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