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新人アフリカ単一起源説と「カインの末裔」 |
イギリスの古人類学者クリストファー・ストリンガーの説く“Out of Africa Model”によれば、現代人はすべてアフリカに起源を持つ。10万〜20万年前にアフリカに誕生した現生人類の祖先は、10万年前頃に中東に進出し、そこから世界に拡散したという(新人アフリカ単一起源説)。
1987年1月の英科学誌『ネイチャー』に発表されたレベッカ・キャンらによるミトコンドリアDNAの研究は、「現代人のミトコンドリアDNAを分析すると、すべてが20万年前頃の一人のアフリカ女性にたどりつく」というものであった。この研究は、多くの分子遺伝学者の研究成果によって確認された。
さらに男性にしかなく、父系に遺伝するY染色体の研究が科学誌『サイエンス』に報告された。それによると、東アジア、東南アジア、オセアニア、シベリア、中央アジアに住む163民族、1万2127人の男性のY染色体を分析した結果、1万2127人すべてが、Y染色体上の三つの座位の一つに突然変異を持っていたという。そしてこの突然変異は、米スタンフォード大学のピーター・アンダーヒルらによって発表されたY染色体上のM168という突然変異と結び付いたものだった。この研究でアンダーヒルらは、Y染色体に残されているM168という突然変異は、3万5000年前から8万9000年前のアフリカで起こったと結論している。
上記のような、分子証拠の積み重ねから、現生人類は10万〜20万年前のアフリカに起源を持つことが広く承認されるようになっている。さらに、化石からも、アフリカ起源説は支持されている。遅くとも10万年前には現代人的な形態を備えた人類がアフリカに現れていた。現生人類がヨーロッパに進出しても、なおネアンデルタール人は生き残っていた。アジアでもホモ・エレクトスの子孫が生息していた可能性が高いという。
さて、ネアンデルタール人は、その後地上から姿を消してしまう。そして、それから現在まで現生人類が世界中に繁栄しているのである。学者はネアンデルタールと現生人類とが「交代した」と表現するが、平たくいえば、ネアンデルタールは我々の先祖によって皆殺しにされたのである。このことからも「平和主義」だの「性善説」だのといったおとぎ話を語るのはやめにして、人類は所詮「カインの末裔」であることを認めなければならないと思う。
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