奴隷制度の歴史−
T.奴隷とはなにか
奴隷とは家畜や物と同じ財である。
奴隷とは、人格を全く否定され、自由も幸福追求権も完全に奪われ、家畜や物と同じように所有され譲渡・売買され、所有者の利益のため、所有者の意のままに労働を強制される人々のことである(※)。奴隷が搾取から逃れることができないのは、結局のところ暴力によって抵抗を封じられているからである。
奴隷制度、人身売買、奴隷貿易は文明の発生とともに発生した商売である。一般的に、その発生の原因は、戦争の捕虜・略奪・世襲・債務の不払いなどであるといわれる。
奴隷といえばアメリカの黒人奴隷をイメージしやすい。しかし、奴隷はアフリカの黒人だけではない。アジア人もヨーロッパ人も奴隷にされ売られていた。21世紀にいたってもなお脈々と続く伝統の商売、それが奴隷貿易である。
(※)筆者は、これらの奴隷の属性のうちで最も基本的なものは被所有性であると思っている。
【参考文献】
今村仁司『仕事』弘文堂思想選書、弘文堂、1988年
Shimosan's OpenLab:奴隷制度史研究についての基礎知識
http://www.daishodai.ac.jp/~shimosan/slavery/index-j.html
池本幸三/布留川正博/下山晃『近代世界と奴隷制―大西洋システムの中で』人文書院、1995年
藤木久志『雑兵たちの戦場―中世の傭兵と奴隷狩り』朝日新聞社、1995年
牧英正『日本法史における人身売買の研究』有斐閣、1961年
牧英正『人身売買』岩波新書
牧英正『近世日本の人身売買の系譜』創文社、1970年
前田信二郎著『売春と人身売買の構造』同文書院、1958年
シドニー・W・ミンツ『[聞書]アフリカン・アメリカン文化の誕生』岩波書店
G・P・ローウィック『日没から夜明けまで』刀水書房
P・シャモワゾー/R・コンフィアン『クレオールとは何か』平凡社
田中克彦『クレオール語と日本語』岩波書店
曽昭? 著、八巻佳子 訳『中国大凉山イ族区横断記』築地書館、1982年
小山修三『縄文学への道』NHKBOOKS
吉田 孝『日本の誕生』岩波新書
川田順造『曠野から−アフリカで考える−』中公文庫