ノーベル賞受賞者で動物行動学のコンラート・ローレンツ博士はその著書『攻撃』において興味深い実験を報告している。それは、家族を形成しているネズミの群に、他のグループのネズミを放すと、あっという間に多数のネズミが襲いかかってこれを殺害してしまう、というものである。
ローレンツ博士は「人間の社会構造はネズミのそれと大変よく似た構造を持っているのだと、十分な根拠をもって結論するだろう。人間はネズミ同様、閉じた同族の間では社会的に平和的に暮らそうとするが、自分の党派でない仲間に対しては文字通り悪魔になるのだ」といっている。
考えてみれば、つい最近まで、リクリエーションとして人間を殺害する「マン・ハンティング」まであったのが人類の実態である。その例として白人入植者によって19世紀にタスマニア原住民が絶滅させられたことや、マンデラ大統領やツツ大主教で有名な南アフリカでは狩猟としての「黒人ハンティング」が盛んであったことなどが挙げられる。
「日本人のルーツを探る」 隈元 浩彦 新潮OH文庫、他参照
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