女大學
一、夫、女子は成長して他人の家へ行、舅姑に仕ふるものなれば、男子よりも親の教ゆるかせにすべからず。父母寵愛して恣に育てぬれば、夫の家に行て、必氣随にて夫に疎まれ、又は舅の誨正しければふ難堪思ひ、舅を恨誹り、中悪くなりて、終には追出され恥を曝す。女子の父母、我訓なき事を謂ずして、舅・夫の悪きとのみ思ふは誤なり。是皆女子の親のをしへなき故なり。
一、女は容よりも心の勝れるを善とすべし。心緒無美女は心騒し。眼恐ろしく見出して、人を怒り、こと葉あららかに物いひ、さがなく口ききて、人に先立、人を恨嫉み、我身に誇り、人を謗笑ひ、われ人に勝りがほなるは、みな女の道に違へるなり。女は唯和ぎ順ひて貞信に、情深く、靜なるを淑とす。○中略
一、人の妻と成ては、その家をよく保つべし、妻の行ひ悪しく、放埒なれば家を破る。萬事儉にして費を作べからず、衣服・飲食なども身の分限にしたがひ用ひて、奢ることなかれ。○中略
右の條々稚き時よりよく訓ふべし。又書付けて折々讀ましめ、怠るることなからしめよ。今代の人、女子に衣服・道具などおほく與へて婚姻せしむるよりも、此條々を能くをしふること、一生身を保つ寶なるべし。
【女大學】