迷いから抜け出す
 
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お釈迦様は、無量寿経に次のようにおっしゃっています。
 
「 さまざまな世界の天人や人々は、出家の者も、
在家の者も、男であれ女であれ、皆、はるかな昔から、
迷いの世界に生まれ変わり、死に変わりして、
憂え苦しみ続けて来たのであって、その有り様を、
詳しく述べ尽くすことはできない。
 
そして、今もなお、迷いの世界にとどまり続けている。
       
この度、そなたたちは仏に出会い、教えを聞き、
また無量寿仏のことを聞くことができた。
 
今こそ、生・老・病・死の苦しみを離れようと思うがよい。
 
この世は醜く汚れに満ちていて、楽しむべきものは何もない。
 
すすんで決断して、身も行いも正しくし、
より多くのよい行いをし、身をつつしんで
心の汚れを洗い清め、言葉と行いに偽りなく、
表裏のないようにするがよい。
 
無量寿仏の国に生まれて、きわまりない楽しみを受け、
永遠に迷いの世界から離れ、ふたたび、貪りや怒りや、
愚かさのために、苦しむことはない。」
 
と、お釈迦様は、大無量寿経の中にお説きになっています。
 
 そして、この迷いの世界から抜け出すためには、
身も行いも正しくして、より多くのよい行いをして、
身をつつしんで心の汚れを洗い清めなさい、
と、おっしゃっていますが、
 
ところがいかに努力しても、努力しても、とても、迷いから
抜け出ることなどはできません。
 
 
 
 親鸞聖人は、比叡山で20年の間、
身も行いも正して、迷いの世界から抜け出る
努力を、誰よりも熱心に続けられたことでしょう。
 
しかし、努力すれば努力するほど、生身の体をもつ
人間の力ではどうすることもできないという事実に、
到達されました。
 
そして、同じ仏説無量寿経の中にある、
お念仏の教えこそが、お釈迦様が本当に
説かれたかったことであると、気づかれたのです。
 
比叡山を降りられて法然上人の元に行かれ、
浄土門に入られたのです。
 
お釈迦様の本当の心を受け取られた喜びの気持ちを、
述べられたのが、歎異抄にある次の言葉でしょう。
 
『 弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、
ひとへに親鸞一人がためなりけり。
されば、それほどの業をもちける身にてありけるを、
たすけんと、おぼしめしたちける本願のかたじけなさよ 』 と、
おっしゃったのでしょう。
 
 私たちは、自分が迷いの世界にいることも、
気づかず、ほんのちっちゃなよい行いをするだけで、
すべての幸せが手に入るような錯覚をもっています。
煩悩一杯の私が、本当に喜べるには、お念仏に出会うしかない。
そのお念仏のめあては、誰でもない、この私のためであったとの
親鸞聖人のお言葉を、しっかりと、かみしめてみたいと思います。
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次回は、7月10日に新しい内容に変わります。
 
                      ( 平成 9年 7月 3日〜 第232回 )