第1240回 苦しみからの解放

平成28年 11月3日~

浄土真宗本願寺派では、25代目の新しいご門主が法灯を継承された記念の法要
伝灯奉告法要がこの10月から勤まっていますが、法要を前に、
大谷光淳ご門主の「ありのままにひたむきに」という本が発行されました。

その本の中に

 
  不安な世の中で
  どう生きていくか
  どう苦しみから解放されるか  という項目がありました。

  お釈迦さまが説かれた仏教は、思いどおりにならない生活の中で、日々の
「苦しみからどうしたら解放されるのか」という問いがスタートにある教え
だと思います。

 仏教の基本的な考え方として、お釈迦さまは、人生を「苦しみ」であると
表現されています。
具体的には「四苦」あるいは「八苦」と言われています。四苦は生老病死、
八苦はそれに愛別離苦などの四つを加えたものです。会いたくない人に

会わなければいけない苦しみや、逆に好きな人と別れなければいけない悲しみなども
「苦しみ」とされています。


 日本の仏教には、そういう好ましくない事態にあっても平静でいられる
ような心をつくっていく、つまり、「修行」を通して煩悩を断ち切る
という仏道があります。
しかし、親鸞聖人は人間であるかぎり「煩悩」をなくすことはできないと説かれます。


 親鸞聖人の教えをお弟子さんが伝えた『歎異抄』という本に
「火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもってそらごとたはごと、
まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします」という文章があります。

この世界は「まことあることなきに」という言い方をされていますが、このことに

ついては「諸行無常」あるいは「諸法無我」という言葉が比較的知られているかと思います。
万物は常に変化しています。

また、変わらない実体を持ってはいません。
それを変わらない何か実体のようなものがあるというふうに思ってしまう私たちの姿が、
「そらごとたはごと、まことあることなき」という姿だと言うのです。


 世の中には、私たちが思うような固定したものはありません。
常に世界は私の意思を超えたところで変化し続けていますから、
苦しみとは、お釈迦さまが明らかにされているように、
「自分白身の思いどおりにならない」ことだという真理を、もう一度
思い起こすことになると思います。


 「思いどおりにならないこと」にとらわれない。私たちにはとうてい
到達しがたい境地ですが、煩悩がなくなるさとりの世界というのは、
結局煩悩にとらわれなくなる世界なのです。

     PHP研究所発行「ありのままにひたむきに」より



         


           私も一言(伝言板)