第1216回 乳母車でご案内

 平成28年 5月19日〜

佐賀地方には 巡番報恩講という行事がありますが、
その法要の内容を記録する本を作ろうと計画しています。

その為の原稿の一部をご紹介します。

九十歳を過ぎた、元婦人会の方と巡番報恩講の話をしていましたら、

「昔は、乳母車押して、ご案内に回ったとよ。」と言われました。

「子どもさんが、まだ赤ちゃんのころから大変でしたね。」

「熱心なお同行の家に、懇志袋を持って回っとったと」

「それは大変でしたね。」

「袋に、お米を入れてもらっとったもんね、あの頃は・・・・・」

そうなのか、乳母車は、自分の赤ちゃんのためではなく、ご懇志のお米を積んで
運ぶためだったのだと、気づきました。障子紙で、お米が一升ほど入る「お仏飯米」と
書かれた袋をつくり、前もって熱心なお同行のお宅を訪ね、頂いて回っていたようです。

今でこそ、お金でのお包みですが、現金収入の少ない時代、ご懇志はお米もあったのだと
納得しました。参詣のご案内をしながら、前もってお米を預かってくること、それが、
巡番報恩講直前の婦人会の、大きな仕事だったのだろうと思います。


 現在、巡番報恩講のご案内は、私どもでは 葉書を出しています。
農村地帯では地域性がはっきりしており、地域の世話役に連絡すれば、その地域内に
連絡が行き渡るように、組織化されているところが多いのでしょうが、
市街の中心部、旧佐賀市内にある佐賀組では、そうした地域性がほとんどなく、
お寺から直接ご案内を出すところが多いのです。


 巡番報恩講の場合は、自分の寺だけではなく、組内のお寺のご門徒へ、
どのようにご案内すればいいのか。その一つはポスターとチラシです。
毎年春秋のお彼岸頃に巡番報恩講をお勤めしていますので、春の場合は、
年末早い時期に印刷し、各寺院に持参し掲示していただきます。秋の場合は、
お盆前にポスターやチラシを配り、お盆にお墓参りの方々へ、参拝を
勧めていただく段取りです。

また、佐賀組では、組内の全寺院から、婦人会や壮年会 総代さんたち、
それに熱心なご門徒等の名簿をいただき、会所の寺から直接 葉書で案内を
出すルールも出来ています。

教区内で、いつも満堂のお寺のご住職とお話しておりましたら、
巡番報恩講にお参りいただいた方々の名簿をつくり、参詣お礼の葉書を出すとともに、
次回の報恩講には、その名簿を使って、案内を出すのだとのお話でした。
またその葉書には、ひと言、書き添えるようにしているとのこと、一人でも多くの方に、
ご縁をと、さまざまな工夫がされているようです。

数年前までは、どのお寺にお参りしても、最前列に座ってお聴聞するのは、
いつも同じ方々、レギュラーメンバーでした。

そして、その方々は 連続して五日間、参詣し、お念仏の声も高々に、
喜んでいただいていました。現在、残念ながら最前列が空席になることがあります。
そのお寺の総代さんや壮年会の方が、率先して座っていただきますが、五日間連続して
お参り頂いた、あのベテランお同行のお姿が、今はなつかしく感じられます。



         


           私も一言(伝言板)